box of chocolates
 翌日は、約束通りランチに出かけた。最近、三駅先のエリアが所謂『スイーツ激戦区』となっていて、続々と新しい店がオープンしていた。私が気になっているお店は、八月にオープンしたカフェ。昼間は、スイーツ付きパスタランチが食べられる。まるで、ダンデライオン二号店と同じだ。
「お待たせ」
「私も今来たところ! 今日は、ライバル店の視察だよ。このあたりが最近の新しいスイーツ激戦区なんだ」
「へぇー。オレは美味しければどこでもいいよ」
「じゃあ、さっそく行こう!」
 私からさり気なく手を握った。驚いた戸田さんと視線がぶつかる。
「いいでしょ? 彼女なんだから」
 そう言って笑うと、戸田さんも同じように笑った。
「あ。戸田さんって呼ぶの、やめた。今日から貴大くん! ね?」
「じゃあ、オレも杏ちゃんって呼ぶよ」
 手を繋いで『貴大くん』と呼ぶ。『杏ちゃん』と呼ばれる。ただそれだけで幸せな気分でいられた。愛とか恋とか、難しいことは考えない。ただ私は、貴大くんが好きだ。

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