お伽噺を紡ぐふたり
「世界は、面白いもんだ、例え、自分のために回っていなくても、例えば、美しい景色を見たとき、音楽に感動したり、…大切な人に出会えたり…そんなことでこの世界を愛しくなる…それが感じられないのはお前が小さくて貧相な世界で生きていた証拠だ」

その男が薄く笑った。彼の瞳の奥には穏やかな炎が宿っているようだった。少女はゆっくり瞬きをした。戸惑いがちらつく。

ーこんな男の人初めてみた。

それと同時に沸き上がる欲求を抑えられずにいた。こんなの初めてだ、少女はおずおずと言葉を口にした。

「あなたと、一緒にに行ってみたいです。私にあなたのいう、面白い世界を見せてほしいんです」
「…俺と一緒に、か?…そういうのは自分で冒険してみるもんだ」
「あなたが私に新しい世界を見せた責任を取ってほしいです」

少女が大袈裟に男にいうと、男は降参とでも言うように手を振った。リベルテ、と小さく男は呟いた。


「…りべ…るて?」
「自由の意味を持った名だ」

彼に貰った音を口の中で転がす。嬉しくて、リベルテは彼に抱きついた。その勢いで彼はバランスを崩し、地面に押し倒された。

「あなたの名前はなんですか?」
「…キース」
「キースよろしくおねがいしますね!」

困った様にキースは笑い、自分のビロードをリベルテにかける。リベルテはその事によって自分がはしたない格好をしていたことを思い出す。そして、慌ててそのビロードを胸の辺りにかきよせた。

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