愛したがりのカラダがね…、《Berry's Cafe限定》-【完】

◆誤魔化せない心



本当に、どのくらいぶりだろう…俊と会わずに家に帰るのは…どんよりした曇り空。空気が湿っぽく雨の匂いがする。


駅が眼の前に近づいてきた時、私はフッとあの夢を思い出し足を止めた。


和弥…もしかして…うぅん…ありえない。


でも、そのありえない夢の続きを見たいと思ったんだ。


懐かしいな…和弥と手を繋いで歩いたこの道。この先に、和弥の家がある。古い民家に挟まれ、その家は以前と何ら変わりなく寂しげに建っていた。


表札は…無い。やっぱり和弥は居ない…


当然じゃない。和弥は引っ越して行ったんだから…そんな分かり切った事を確かめようとここまで来た自分がバカみたいで呆れてしまう。


―――ポトリ…


小さな雨粒が私の頬を濡らす。


「雨…か…」


見上げた暗い空から、まるで泣いてるみたいな冷たい雨が音も無く降り注ぎ、アスファルトの上で小さく弾ける…暫くの間、雨に濡れながら和弥の家をぼんやり眺めていた。


すると、道の向こうの方から騒がしい声と共に数人の男性が走ってくるのが見えた。


「何で雨降るんだよ?」

「そんなの、知らねぇよ!」

「ったく、待ち合わせ場所考えろよな」


勢い良く走り抜けていく男性の中の一人と眼が合った瞬間、私の体は金縛りに合ったみたいに動けなくなってしまったんだ。


「うそ…どうして…」


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