愛したがりのカラダがね…、《Berry's Cafe限定》-【完】
「は、はい」
アイさんとは毎日の様に顔を合わせていたけど、ほとんど挨拶を交わす程度で、ちゃんと会話するのは初めてだった。
遠慮気味にカウンターの丸椅子に腰を下ろすと、優しく笑い掛けてくれるアイさん。
「ウーロン茶でいい?」
「はい」
静かにカウンターに置かれたグラスを手に取り口に運ぶ。
「あのね…俊の事なんだけど…」
「俊の?」
「あの子の事、本気で好き?」
いきなり触れられたくない部分を突かれ、私は動揺した。
「どうして…ですか?」
「真央ちゃんが初めてここに来た時、真央ちゅんは和ちゃんの彼女だったんでしょ?でも…今は、俊の彼女」
「…はい」
すぐに男を変える軽い女だと思われてるのかな?でも、事実そうだから仕方ない。
「和ちゃんと一緒に居るとこチラッとしか見てないけど、今、俊と居る真央ちゃんとは別人みたいにしてるから…」
「別人…ですか?」
「そう。眼がね…全然違う。和ちゃんと居た時の方が生き生きした眼してたよ…」
「アイさん…」
さすがだと思った。話しもした事ない私の気持ちを見透かしアッサリと言い当ててしまうなんて…
今まで誰にも言えず一人で悩み。胸の奥に押さえ込んでいた想いが溢れ出しそうになる。でもソレをアイさんに悟られない様に必死で堪えた。
だって、アイさんは俊の身内同然の人。私の本当の気持ちがアイさんにバレたら俊に告げ口されると思ったからだ。
警戒しながらアイさんを見つめると、彼女は寂しそうな笑顔を浮かべ静かに話し出した。