愛したがりのカラダがね…、《Berry's Cafe限定》-【完】
俊が建設会社に面接に行く前日、私は彼と話そうと決心した。でも、私が言うより先に俊から会いたいと連絡が入った。
俊が待ち合わせ場所に指定したのは、珍しく俊の家ではなく駅前のカフェ。私がカフェに到着したのは約束の時間の15分前。なのに俊は既に来ていて、灰皿には数本のタバコが灰になっていた。
向き合って座った俊の眼は真っ赤に充血していて、なんだか元気がない。
「体調…悪いんじゃないの?」と声を掛けてみたが「心配するな。寝てないだけだ…」と言うだけ。
俊は運ばれてきたコーヒーを一口飲み俯いたまま話し出す。
「…実は…オカンが帰って来たんだ…」
「お母さんが?」
「あぁ、男に捨てられてボロボロになって帰って来た…バカな女だよ」
俊は苛立ちを隠す様にタバコに火を点ける。
「自分より10歳も若い男に本気で惚れちまって、店もほっぽり出して好き勝手な事してきたくせに、帰って来たと思ったら、やっぱり頼れるのは俺だけだって…調子のいい事ぬかすんだ…」
怒りのせいだろうか…タバコを持つ俊の手が小刻みに震えてる。
「真央…俺…」
まだ長いタバコを灰皿に押し付け、俊が初めて私と視線を合わせた。その眼はどこか寂しげで、でも何かを決意したみたいな真っすぐな眼差しだった。
「あんなバカで、どうしょうもない女でも、俺には…たった一人の母親なんだよ…」
「…俊」