愛したがりのカラダがね…、《Berry's Cafe限定》-【完】

大塚さんが店の女将に名前を告げると個室に案内された。


「お連れの方、もうお見えになってますよ」


その言葉に異常に反応する私。覚悟を決めたはずなのに、動揺しまくってる。そんな私を見た大塚さんが黙って私の手をギュッと握ってくれた。私も彼の大きな手を強く握り返す。


格子戸をくぐり障子を開け中に入ると、色とりどりの料理が眼に飛び込んできた。そしてその向こうに、あの後藤翔太の姿があった。


大塚さんに促され席につき後藤と向かい合う。


一番初めに口を開いたのは、大塚さんだった。


「彼女の前でハッキリ言えよ。もう付きまとったりしないって」


すると、後藤は…


「あぁ、もう付きまとったりしない…悪かったよ…」


そう言って、眼の前の私達に深々と頭を下げた。


大塚さんは彼にかなりキツイ言葉を浴びせていたが、後藤は何も言い返す事なく、ただ頷いていた。そんな後藤の姿を見て、私はやっとホッとし、小声で「良かった…」と呟きながら大きく息を吐く。


「分かってくれたらそれでいい。じゃあ、せっかくの料理だ。食おう。後藤君も食えよ」


すっかりいつもの大塚さんに戻り大人な対応してる。でも、残りの料理が運ばれてきて、食事も終わりに近づいた頃、場の雰囲気が一変したんだ。


急に後藤が鋭い目をして私を睨んだと思ったら、ありえない事を口走った。


「真央ちゃん…俺、もう一度、真央ちゃんとシたいんだけど…ここで、どう?」

「えっ?」


私の手から箸が滑り落ちるのと同時に、大塚さんが無言で立ち上がる。その怒りに満ちた横顔を見た私は焦った。


まさか大塚さん、後藤を殴ったりしないよね?もしそんな事して銀行にバレたら、彼の将来が…


「大塚さん、暴力はダメ……えっ…?」

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