愛したがりのカラダがね…、《Berry's Cafe限定》-【完】
「北沢さん…辛い話しになると思うけど、聞いてもらえるかな?」
私が頷いたのを確認し、新川さんが缶ビールを一気に飲み干す。
「昨日の事だけど…あの2人、どうしたい?」
「どうしたいって…どういう事ですか?」
驚いて眼を見開く私を見つめながら、新川さんは淡々と話しを続ける。
「今日、会社の顧問弁護士と少し話したんだけどね…婦女暴行罪…北沢さんの場合は未遂だが、これは親告罪で、君が訴えれば成立するそうだ。その代わり、裁判になれば君は法廷で証言する事になる…」
裁判?法廷?
予想もしてなかった彼の言葉に私は激しく動揺した。
「イヤ…そんなの…イヤです…」
まるでテレビドラマを観ている気分。
「それと…これは少々、強引で極端な話しかもしれないが、その背中の傷…アイツに直接やられた訳じゃないが、両手を縛られ足を引っ張られて転んだって事になると…未必の故意…
北沢さんの横には皿やグラスといった壊れやすい食器があった。両手の自由を奪われている君は、転んでも自ら危険を回避する事が出来ず怪我をするのが予測出来たのに、あえてそうした。
大げさに言えば、打ち所が悪かったら死ぬかもしれないのに、それでもいいと思ってそうしたことになる。つまり、君がその気になれば、アイツらを裁く方法はいくらでもある…って事だ。
北沢さんがアイツらを許せないと思っているなら、力になるよ」
何時になく真剣な表情の新川さん。
「私、そんな大げさに…したくないです…」
私の事を思ってそう言ってくれてるってのは分かってた。でも、忘れたい…一日も早く昨日の事は忘れたい。訴えていつまでも関わるのだけはイヤだった。
「もう…思い出したく…ない」