愛したがりのカラダがね…、《Berry's Cafe限定》-【完】
「北沢、甘いモン好きか?」
「えっ…うん」
「そっか」
彼が足を止めたのは、学校近くのアーケードをくぐった商店街の中にある『喜楽』という甘味処の前だった。
店頭では、ぽっちゃり系のおばちゃんが串に刺したお団子を焼いていて、香ばしい香りが辺りに漂っている。
「ここのみたらし団子スゲー旨いんだけど…北沢、食ったことある?」
「うぅん。ないけど…」
「じゃあ、食おう!!おばちゃん、みたらし6本ね!!」
おばちゃんが笑顔で返事をすると、焼き上がったばかりのみたらし団子を手早くパックに詰めながら私の顔を覗き見る。
「和弥君、その娘(こ)は?」
「んっ?俺の彼女」
「ふーん…彼女ねぇ…」
意味深な笑みを浮かべたおばちゃんからみたらし団子を受け取ると、店の近くにあったベンチに並んで座り熱々のみたらしを頬張る。
「あ、美味しい!!」
「だろ?このタレ、醤油がいい具合なんだよなぁ~
気持ち悪い甘さがないのがいい」
満足そうに桜井君が微笑む。
「このみたらし…よく買うの?」
「あぁ、部活終わった後とか、週3くらいは来てる」
「へぇー…甘党なんだ…」
「まぁな、こんなのは好きだけど、チョコはあんま好きじゃねぇんだよ…」
そう言うと、鞄の横に置いてあるチョコ一杯の紙袋を恨めしそうに眺めた。
「あっ…」
チョコ…嫌いなのに、私のあげたチョコ食べてくれたんだ…
それも、あの最悪なチョコを…
彼の優しさが胸に沁みる…
嬉しくて感激していると、桜井君が意外な事を言った。
「あのさぁ、このチョコ全部食えそうにないから北沢にやるよ」
「えっ?」
彼の何気ない一言で、ほんわか温かくなった心が一気に冷めていくのを感じた。