愛したがりのカラダがね…、《Berry's Cafe限定》-【完】

―――日曜日


この日だけ社用車の運転を許された和弥と一緒に、あの丘の上にある結婚式場に向かった。お互い口数は少なく時々ため息が漏れる…


駐車場に車を止めても、すぐに降りることが出来ない私と和弥。シートに深く座り、無言で下を向く。沈黙は、現実からの一種の逃避だった…出来る事なら本当に、この場から逃げ出したい。


ひざの上に置いた手でスカートをギュッと握り締めると、和弥の左手が私の右手を包み込む。


「和弥…」

「行くか?…真央」

「…うん」


覚悟を決め車を降り、鉄柵の門をくぐる。さっきまで降ってた雨の雫が太陽の光に反射し、濡れた庭の草花がキラキラと輝いてる…こんな綺麗な風景を見ても今の私にはなんの感動もない。


和弥が真っ白な扉を押し、先に私を中に入れ静かに扉を閉めた。その瞬間、もう引き返せないんだと胸が苦しくなる。


すぐに奥の方から香山支配人が現れ私達に軽く一礼し、笑顔で話し出した。


「お待ち致しておりました。新川様からお話しは伺っております。どうぞ、こちらへ…」


前に来た時と同じ硝子張りの待合室に案内され一番窓際のテーブルの椅子に腰を下ろす。


「本日、御予約して頂けるというお話でしたので、専属のウエディングプランナーを呼んでおります。詳しいお話はその者からお聞き下さい」


すると一人の女性が小脇に大きめのバックを抱え待合室に入ってきた。


「初めまして。これからお2人のお世話をさせて頂きます。宮原です…」


頭を上げた女性の顔を見た私と和弥は…


言葉を失った。



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