愛したがりのカラダがね…、《Berry's Cafe限定》-【完】
「いいか?真央はな、麗子がくれたバレンタインのチョコを俺が要らないって言った時、想いがこもった大切なモンだから、人にやるなんて言うなって…そう言ったんだ…」
あ…あの時のチョコ…
麗子から貰ったのも入ってたんだ…
「なぁ、麗子…確かに、外見だけ見たらお前はいい女だよ。
でもな、麗子にそんなこと言えるか?自分が一番のお前に、真央の優しい気持ちが分かるか?
真央はな…ここが最高に綺麗なんだよ!!」
そう言って、自分の胸を拳で何度も叩く。
桜井君…そんな風に思ってくれてたんだ…
「分かったら、もう二度と真央にこんな事するな。もし…また真央になんかしてみろ…本気でお前…殺すぞ…」
桜井君の顔は、ゾクッとするほど怖かった。
「真央、行くぞ!」
桜井君の手が麗子から離れると、麗子はヘナヘナとその場に座り込む。
その姿を見る事なく桜井君は私を立たせると、手を引き歩き出した。
校門まで来ると、少し振り向いた桜井君が「ごめんな…俺のせいで…」とさっきとは別人みたいな弱々しい声で呟き、麗子に踏みつけられた泥だらけの赤く腫れた私の手の甲を見つめる。
そして、鞄からあのタオルを取り出し、既に乾いて白くなった泥を払ってくれた。
「ダメだよ…汚れちゃう…」
慌てて手を引っ込めようとしたけど、しっかり握った手はそれを許さない。
「タオルにまで気ぃ使うのか?…バカだな」
夕焼けに染まった桜井君の笑顔が眩しくて、思わず眼を細める。
「真央…お前の手…冷たいな。心の温かいヤツは手が冷たいって言うけど、アレ、ホントなんだな」
あ…
その時、初めて気付いた。
桜井君、私の事…"真央"って呼んでる…