愛したがりのカラダがね…、《Berry's Cafe限定》-【完】
マンションの部屋の扉を開け中に入ると、人の気配を感じ思わず足が止まった。
うそ…龍司…来てるの?今日はまだ実家のはずなのに…それより、この泣きはらした顔を龍司に見せる訳にはいかない。
慌てて洗面所に駆け込み冷水で顔を洗う。こんな事しても無駄だって分かってたけど、なんとかしないと…と焦っていた。
眼を瞑ったまま顔を上げ、タオルを取ろうと右手を伸ばした時、私の手に柔らかいタオルが手渡された…
「真央、お帰り…」
龍司…
手渡されたタオルで顔を隠し、精一杯の明るい声で言う。
「ただいま。龍司来てたんだ」
彼の横をすり抜け洗面所を後にしようとした私の背中に龍司の声が突き刺さる。
「桜井に、会ってきたのか?」
「…………!!」
「隠さなくてもいい。今日は桜井の誕生日だったんだろ?真央がアイツに会いに行くって事くらい分かってた…」
「えっ…」
分かってた?分かっててワザと実家に帰ったの?龍司には何もかもお見通しってワケ?
言葉を失った私は、泣きはらした顔を隠す事も忘れ龍司をジッと見つめた。
「じゃあ、私を桜井君の所に行かせる為に?」
「あぁ。毎日、真央の顔を見てれば分かるさ…真央が何を考え、何をしたいと思ってるか…俺が気付かないとでも思ってたのか?」
そう言うと、龍司は寂しそうに笑った。