愛したがりのカラダがね…、《Berry's Cafe限定》-【完】
第5章
◇別々の道へ…
「真央さんと結婚させて下さい。必ず幸せにします」
9月に入ったばかりの週末、私と龍司は私の実家に来ていた。
「う…ん。あぁ…」
「あなた、ちゃんと返事しないと…」
龍司より両親の方が緊張している。それもそのはず…高岡商事の次期社長と聞いた時の2人の驚きはハンパなかった。
「本当に、この娘でいいんですか?」
お母さんが龍司にこの質問をするのは、これで3回目。
「もちろんです。真央さん以外の女性は考えられませんから」
堂々と言ってのける龍司にお母さんも圧倒され苦笑いを浮かべてる。
「龍司、そろそろ行かないと…」
「あぁ…もうそんな時間か…」
相変わらず忙しい龍司。どうしても抜けられない仕事があって今日中に帰らないといけない。
「今度はゆっくりお伺いさせて頂きますので…今日はこれで失礼します」
申し訳なさそうに頭を下げる龍司を見て、今まで借りてきた猫みたいに大人しかったお父さんが急に元気になり「いやぁ~残念だなぁ~もう少し話したかったが…」なんて、心にもないことを言ってる。
私は笑いを堪えながら龍司と玄関に向かった。
「じゃあ、駅まで送ってくるね」
見送りのお母さんに手を振り、駅までの道のりを龍司と並んで歩き出す。
「いいご両親だな。これからは俺の親になる人達だから大切にするよ」
「うん」
龍司の優しさに包まれ私は"幸せ"だった…
…"幸せ"だと、思い込もうとしていた…