愛したがりのカラダがね…、《Berry's Cafe限定》-【完】

もう納得してるのに…和弥には沙紀が居る。どんなに彼を求めても和弥は私の元には戻っては来ない。


分かっていても、どうしようもなく和弥が恋しい…



そんな想いを断ち切れないまま、月日だけが無情に流れ、季節は秋。


今日は、私と龍司の結納の日だ…


ホテルの1階にある日本庭園を望む和室で、龍司と彼の両親、そして私の両親が向き合い婚約式が滞りなく執り行われた。


この日の為に龍司のお義母さんが用意してくれた金糸銀糸が織り込まれた艶やかな振袖を身に付け、私は偽りの笑顔を振りまく。


和やかな龍司の両親に比べ、相変わらず緊張している私の両親は食事も喉を通らないみたい。実は私も同じで、さっきから箸が止まりお茶ばかり飲んでたりする。


時折視界に入る床の間には"共白髪"の掛け軸の前に豪華な結納の水引と目録が所狭しと並び、ザ・お金持ちを演出していた。


それは一般庶民の私にとって、プレッシャー以外の何ものでもなく、これからどんな生活が待っているのかと不安で心細くなる。


龍司の家族にはとっても良くしてもらって感謝の気持ちで一杯だけど、いつかお義母さんが言ってた様に、私に社長夫人なんて務まるのかな…


今まで漠然と考えていた結婚が現実味を帯びてきた今、恐怖で心が押し潰されそうだった。


この場から逃げ出したい気分…



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