愛したがりのカラダがね…、《Berry's Cafe限定》-【完】
和弥の隣には穏やかに笑う沙紀の姿があった。
全身の血が逆流しそうなほど動揺して雑誌を持つ手が震える。
「お待ち致しておりました。桜井様…こちらへ…」
店員に案内され2人が私達に近づいて来る。隣に座っている龍司も和弥に気付いた様で驚きの声を上げた。
「桜井じゃないか!!」
「あっ…部長…」
和弥は龍司を見た後、ほんの少しだけ私を見たが、すぐに視線を龍司に戻した。
「どうした?彼女とデートか?」
「…は…い。今日は彼女の誕生日で…以前、部長がこの店は雰囲気も味もいいと話してたのを思い出して…すみません…」
「バカだなぁ~なんで謝るんだ?そうか、彼女の誕生日か!おめでとう」
龍司の言葉に沙紀は「有難う御座います」と軽く会釈し、隣の私に冷たい視線を向ける。
そして、予約を取ってなかったので待たされていると龍司が恥ずかしそうに笑うと、沙紀が思いもよらないことを口にした。
「もし宜しければ、私達のテーブルで一緒にお食事しませんか?」
これには、さすがに沙紀以外の3人全員が驚いた。
「イヤイヤ…せっかくの誕生日を邪魔しちゃ悪いよ。俺達の事は気にしないでいいから…」
「いえ、部長さんには和弥君がお世話になってますし、人数が多い方が楽しいですから…是非、ご一緒に…」
「沙紀…無理に誘ったら迷惑だぞ…」
和弥が沙紀の言葉を遮るが、沙紀は全く動じる様子もなく笑顔で話し続ける。
「部長さんに和弥君の仕事ぶりとかお聞きしたいし…それに…真央とも、久しぶりに学生時代の思い出話ししたいもの」
「思い出話し…って…真央と沙紀さんは知り合いなの?」
龍司が驚いて身を乗り出した。
「はい。私達、親友ですから…ねぇ、真央」
そう言って私にニッコリ笑い掛ける沙紀の笑顔が不気味でゾクッとする。
沙紀…何を考えてるの?