愛したがりのカラダがね…、《Berry's Cafe限定》-【完】
龍司が出勤して1時間ほど経った頃、携帯が鳴った。
「龍司?どうしたの?」
『真央、悪い。玄関に会社のネームが入った茶封筒…置いてないか?』
そう言われてリビングから玄関を覗くと、確かに下駄箱の上にB4サイズの茶色い封筒が置いてあるのが見えた。
「あー、ある!置いてあるよ…」
『そうか…やっぱり忘れてたか…』
龍司の沈んだ声とため息が聞こえてくる。
『すまないが、その封筒を会社まで持ってきてくれないかな…後10分ほどで会議が始まるんだよ。取りに帰ってる時間がない。この会議でどうしても必要な資料なんだ…』
「分かった。今からタクシーで行くから待ってて」
慌ててコートを羽織りタクシーで龍司の会社に向かう。会社が入ったビルの前でタクシーを降り、駆け出した私の眼の前に現れたのは…
「あっ…」
「お久しぶりです。北沢様…」
「…三浦さん」
以前、和弥の彼女だと疑ってしまった秘書課の三浦さんだ。
「お待ちしておりました。資料、お預かりします」
「…お願いします…」
三浦さんに封筒を手渡しながら、以前なら和弥が待っててくれてたのに…そんな事を考えてしまった。
バカだな…私ったら、何を期待してたんだろう…うぅん…違う。期待なんかじゃない。ただ最後に和弥に直接会ってさよならを言いたかっただけ…もう一生、会う事のない和弥に…
でも、そんな我がまま言えないよね…
諦めビルを出ようと歩き出した時、三浦さんが私を呼び止める。
「北沢様、少々お時間頂いても宜しいでしょうか?」