愛したがりのカラダがね…、《Berry's Cafe限定》-【完】

「もしもこの先、会社関係で真央に会う事があっても、その頃にはもう…新川真央になってるんだろうな…」


片肘を付いてタバコの煙を吐き出す和弥が遠い眼をして言う。


「俺が、この先も高岡商事に勤めていたらの話しだけどさ…」

「えっ?」

「あ…いや、なんでもない」

「なんなの?お願いだから、もう隠し事はしないで!」


私をチラッと見た和弥が短くなったタバコを揉み消した。


「そうだな…もう会えないかもしれないもんな…正直に話すよ。14日に向こうに行ったらすぐ入院する。何も問題なければ一週間後に手術だ…」

「そんなに…急に?」

「美子の体力がある内に手術した方がいいって言われたんだ。その時、医者に言われた。俺の手術は比較的簡単で安全だけど、万が一って事もあるって…」

「どういう意味?」

「だから…100%安全って訳じゃないって事だよ。それなりのリスクはある。たとえ手術が成功しても、その後に合併症になったり…

そうなったら、いつ会社に復帰出来るかも分からない。かと言って、いつまでも休んでいられないし…辞めなきゃいけなくなるかもしれない。そうなったら真央とも、もう会う事はない…だろ?」


そんな…


「イヤだ…和弥…イヤ」


身を乗り出し、和弥のスーツの袖を掴んで激しく首を振った。


< 329 / 362 >

この作品をシェア

pagetop