愛したがりのカラダがね…、《Berry's Cafe限定》-【完】
「もしもこの先、会社関係で真央に会う事があっても、その頃にはもう…新川真央になってるんだろうな…」
片肘を付いてタバコの煙を吐き出す和弥が遠い眼をして言う。
「俺が、この先も高岡商事に勤めていたらの話しだけどさ…」
「えっ?」
「あ…いや、なんでもない」
「なんなの?お願いだから、もう隠し事はしないで!」
私をチラッと見た和弥が短くなったタバコを揉み消した。
「そうだな…もう会えないかもしれないもんな…正直に話すよ。14日に向こうに行ったらすぐ入院する。何も問題なければ一週間後に手術だ…」
「そんなに…急に?」
「美子の体力がある内に手術した方がいいって言われたんだ。その時、医者に言われた。俺の手術は比較的簡単で安全だけど、万が一って事もあるって…」
「どういう意味?」
「だから…100%安全って訳じゃないって事だよ。それなりのリスクはある。たとえ手術が成功しても、その後に合併症になったり…
そうなったら、いつ会社に復帰出来るかも分からない。かと言って、いつまでも休んでいられないし…辞めなきゃいけなくなるかもしれない。そうなったら真央とも、もう会う事はない…だろ?」
そんな…
「イヤだ…和弥…イヤ」
身を乗り出し、和弥のスーツの袖を掴んで激しく首を振った。