愛したがりのカラダがね…、《Berry's Cafe限定》-【完】

「…真央」

「龍司…」


いつもの龍司じゃない…それは、ひと目見て分かった。


今まで見た事もない怖い顔をした龍司の鋭い視線が私に向けられた瞬間、恐怖を感じ足が竦んだ。


「新川さん…?」


麗子が探る様に龍司に声を掛けると、強張っていた彼の顔がいつもの優しい表情に戻り、微かに微笑む。


「麗子さん、やっと決心がついたよ…」


その言葉を聞いた麗子がハァーっと息を吐き、ヘナヘナとその場に座り込んでしまった。


いったいなんなの?…決心って…どういう事?


疑問に思いながらも2人の会話に割り込む事が出来ず、無言で立ち尽くしていると、龍司が私の眼の前に立ちソッと頬を撫でる。


「真央、君と桜井の事、全部聞いたよ…」


えっ…うそ…


全身の血が引いていく…


「…全部って…?」

「何もかも…全てだ。どうして言ってくれなかったんだ?君達が高校時代の同級生で、付き合ってた事…そして、いつか桜井の彼女の沙紀さんが言ってた真央の初めての男が桜井だって事…」

「イヤ…やめて龍司…」


どうして今更、そんな事…


「俺は真央と桜井がそんな仲だったなんて思ってもなかった。ほんの出来心で間がさしたんだとばかり…」

「誰に聞いたの?麗子…麗子なの?」


私は足元に座り込んでいる麗子を睨み付けた。


和弥との事は終わった事なのに…なぜ今になって龍司にそんな事言うの?


「真央の"幸せ"の為に…新川さんに全部話したんだよ…」

「そんなの頼んでないよ!これは和弥が望んだ事なの…和弥の為に私達は別れたのに…」


堪らず声を荒げた私の後ろから、弱々しいしい声がした…


「…真央」


< 336 / 362 >

この作品をシェア

pagetop