愛したがりのカラダがね…、《Berry's Cafe限定》-【完】
「んっ?アメちゃんだ」
「アメ…ちゃん?」
恐る恐る手を開くと、小さな袋入りの飴が一つ現れた。
「ホント…飴だ」
「あぁ、タバコ吸うとさぁ、喉がいがらっぽくてな。この飴は必需品なんだよなぁ~
それ、俺が一番好きなピーチ味の飴なんだぞ。最後に食おうって大事に残しといたやつ。仕方ないから真央にやるよ」
どうやらこの飴は、彼にとって大切なモノらしい…
「あ、ありがとう…」
「おう!!」
森本君は満足そうに何度も頷いてる。
この人、マジだ…こんなお茶目な人だったの?
「あ、電車来た。乗るぞ!!」
「う…ん」
通勤通学の客でごった返す車内は超満員。電車はすし詰め状態だ。私は森本君と向き合って乗ってしまったから、まるで抱き合った様な体勢。
「これだから、まともに学校行きたくねぇんだよなぁ~マジ、うぜー!!」
ううっ、森本君、キレかけてる…
彼の胸に顔が当たりそうになり、必死で堪える。
「大丈夫か?真央…。無理しねぇで、俺にもたれ掛かっていいぞ」
「あ、うん。平気だから…ありがとう」
「バカ!!何、遠慮してんだよ。俺と居る時怪我なんかさせたら和弥に合わす顔がないだろ?」
森本君の意外な言葉に驚き、思わず顔を上げると…
「ほら…」
私を広い胸に抱き寄せ、庇う様に優しく包み込んでくれた。
「あっ…」
なんか…変な気分。彼の事、好きでもないのにドキドキしちゃう…でも、森本君って、優しいんだ。
和弥が森本君を親友と言う理由が少し分かった様な気がして、私は右手のアメちゃんを、ギュッと握り締めた…