愛したがりのカラダがね…、《Berry's Cafe限定》-【完】
慌てて靴を履こうとした時、一瞬、体が止まった…そして、後ろを振り向き階段の上を見上げる。
和弥…追いかけて来てくれない…
ほんの少しだけど、期待していた自分がバカみたい。
「お邪魔しました…」
カウンターの女性に頭を下げ、視線を下げたままドアを開けると、湿った生温かい風が私の頬を撫でる様に吹き抜けていく。
すると和弥と交わった部分がズキリと疼き、どうしようもなく悲しくなる。でも、その下腹部の鈍い痛みより、ずっと心が痛かった。
下を向いたまま足早に歩き出し、もう少しで繁華街を抜けるという時だった。誰かが私の前に立ちはだかり腕を掴んだんだ。驚いて顔を上げると、森本君が無表情で立っていた。
「真央、帰るのか?」
「うん…放して」
「で、和弥と…シたのか?」
今までの不安な気持ちが怒りに変わっていく…
「そんな事、森本君に関係無いでしょ!」
大きく眼を見開いた森本君の手が更に私の腕を強く握りしめた。
「何かあったのか?」
その声は間違いなく私を心配してくれてる…そう思ったけど、彼に対して素直になれず、愛想のない言い方をしてしまう。
「別に…何も…」
「和弥と喧嘩でもしたのか?」
まるで、親が子供を気遣う様な切なそうな眼。
「喧嘩なんか…してない」
森本君から視線を逸らし俯くと、我慢していた涙がポロポロと零れ落ちた。
「…真央」
森本君は私の肩を抱き路地裏に引っ張り込むと、身をかがめ涙で濡れた頬を撫でながら私をジッと見る。
「無理すんな。初めてだもんな…痛かったんだろ?」