その手を天高く伸ばせば
さんざん笑ってサエと別れると、ドスン!とイスに腰掛けて溜め息を一つ。
そしてデスクに置いてある小さな卓上カレンダーに目がとまった。
<1・・2・・3・・・>

小さなカレンダーに顔を近付けて数え出す。
<・・・10・・11・・・12・・・もう2週間以上も遅れてる・・・・・・・>

「いや・・・まだ分からないよね・・」

と、自分に言い聞かせる。
ユウは不安を掻き消すように頭を振って仕事に集中する。まだまだ仕事が残っているのだ、早く取り掛からないとまた今日も終電ギリギリになってしまう。
「・・・・」

パラパラと残る仕事の資料を見てみる・・・
<う〜〜ん、今日も残業だな・・・>

「はぁ〜・・・」




《♪♪・・♪♪♪・・♪♪♪♪》

《今日も残業です・・終電までには終わらせるぞ!!!頑張れ私!》




《頑張れ
もし終電間に合わなかったら電話しろよ?迎えに行くから》




《頑張るアリガト》




ガラガラガラ・・・部屋の窓を開けて夜空を見上げてタバコに火を付けた。
ふぅ・・・と吐く煙がユラユラ天に昇る。
ケンチはまた、携帯を開きメール打つ。





《♪♪♪♪・・♪♪♪・・♪♪》


《今日は三日月が綺麗だよ
無理すんなよ》


「ありがとケンチ・・」

午後10時を過ぎた頃、ケンチから届いたメールに再びヤル気が湧いてきた。

「よし、後少し!頑張ろ!」

またユウは資料と格闘し始めた。
ユウにとってケンチからの応援メールが1番の元気の源だ。

ケンチのメールを読み終わったユウは、もの凄い勢いで残りの仕事を片付け始めた。





頑張って頑張ってはみたものの、結局終電には間に合わず・・ユウは会社の入り口で途方に暮れていた。


「はぁ〜〜〜・・・やっぱり間に合わなかった・・・どうしよタクシーあるかな・・・・」

《♪♪♪♪・・♪♪♪・・♪♪》
タイミング良く携帯が鳴った。

《お疲れ
終電間に合わなかったみたいだな大丈夫か?》

「ケンチ・・」

《お疲れ
終電・・間に合わなかったけど、大丈夫!!心配しないで!》

カラ元気のメールを、とりあえずケンチに返す。
《♪♪♪♪・・♪♪》
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