その手を天高く伸ばせば
真夜中にオレの隣で、美味しそうに笑いながら牛丼を食べているキミ。
仕事のグチを聞きながら、キミの話す顔が、次々と七変化するのが可笑しくてついついキミを見て笑ってしまう。

「?何で笑うの〜〜!!!ワタシは怒ってんだから」

「うん・・・ごめんごめん!で、それから?」

「でね、今年入社したコが・・・・・」

キミは夢中でグチや弱音をオレに話す。そんな時、キミの側に居られる事が嬉しくて、キミがオレの前で弱音を吐くのが嬉しくて・・・やっぱり笑ってしまう。

オレが笑うとキミは頬を膨らませて怒るけど、オレにはそんなキミも可愛くて仕方ないんだ・・・。意地悪するつもりじゃないけど、たまにはキミを、からかってみたくなる。

子供みたいにスネるキミも大好きだから、オレは・・・・・やっぱり意地悪かもしれないね。スネた顔も怒った顔も笑った顔も大好きだから、コロコロ変わるキミの表情は、本当に子供のままだね・・・・。だからこそキミが無邪気過ぎて時々心配してしまうんだ。
無邪気なキミの笑った顔やスネた顔・・・それに子供の様に泣く顔を、他のヤツ(男)には見せないで欲しい、だってキミの泣き顔を見ると・・・放っておけなくなるんだ。だから泣きたくなったらオレを呼んで、オレの胸でだけ・・こっそり泣いて欲しい。我が儘かもしれないけれど、心配なんだキミがあまりにも純粋過ぎて・・・少女みたいなキミの笑顔を知ったらきっと悪い虫がキミを傷つけるから・・・キミを汚してしまうから・・・・。だから心配で心配で、オレはキミの傍に居たいんだ。一分一秒も離れたくないんだ。



ケンチは、グチりながらパクパク牛丼を頬張るユウを突然引き寄せ抱きしめた。

「ちょ・・ケンチ皆見てるよ!ケンチってば!!」

「いいじゃん見せびらかしてやろうぜ?ユウ」

「ケンチ?!」

顔を真っ赤にして、しきりに離れようとするユウを強く抱きしめケンチは目を閉じた。

<ずっとこのまま一緒に居られたらいいのに・・・>

チラチラ二人を見る店員、そして数人の客がユウとケンチに目のやり場に困りながら牛丼を食べ進めている。けれど照れるユウや周り人間を一切気にせず、しばらくの間ユウを抱きしめ続けた。
そして抱きしめるユウの耳元で囁く。

「大好きだよ」と・・・
< 24 / 33 >

この作品をシェア

pagetop