疑惑のグロス
定例会議のある月曜の午前中。
社内はひっそりと静まり返っている。
事務仕事の私たちには、留守番という名目をかぶった、束の間の休息タイムだ。
「門番ってさ、会議から帰ってくるの遅いよね。
かと言って、とっとと帰ってこられるのも嬉しくないけどさ」
マグカップ片手に、早速おしゃべり開始だ。
田上さんの後ろに座る村野さんは、私たちより二年も早く門番の嫌味の餌食となっているから、余計恨みも大きい。
「たぶん、総務の小川課長と話し込んでるからですよ。
あれは絶対、恋する乙女の瞳ですってば!」
両手を顔の前で組んだ田上さんが、大げさに目をパチパチ瞬きしてみせると、その場にいた皆がどっと笑った。