疑惑のグロス

ふと見上げた時計の針は、気になる時刻を指していた。

――給湯室であの二人がそろそろ楽しく話している頃だ。


今日は、一昨日のデートのことでも振り返っているんだろうか。

大塚に彼氏がいる事も知らず、楽しげな顔を見せる彼の顔が脳裏に浮かぶ。




もしかしたら……彼も同じなのかな。


私が彼を想って、どうにもならない恋だとため息をつくように、彼も大塚を想って、心を痛めているのかな……。


夜も眠れなくて、ため息で曇らせた窓を拭いて、星空を眺めたりしてさ。




私……最低な女だ。


彼の恋路を邪魔しようって、そればかり考えてた。

私が大塚にされて憤慨してることを、自分も彼にやろうとしているんだ。


そろそろ広まる、あの噂で北野くんが怒っちゃって。

もしも大塚に冷たくあしらわれるようになっちゃったら……彼、悲しむだろうな。

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