疑惑のグロス

「お疲れはまへふ……んぐ……こないだはどうもですー」


口の周りにクズを付けたまま、彼女は巨体を揺らして笑った。

手にしているペットボトルのミルクティを口へ運び、音を立ててゴクゴクと飲むと、大きく息を吐いた。


「すみません。この時間ってどうしてもお腹空いちゃって。

ところで、こないだはおもしろい話を教えてくれて、ありがとうございました!

早速みんなに教えたら、結構反応が良くて……ウフフ」


この子は甘い物だけではなく、うわさ話もお腹一杯に満たしたい程の大好物なのだろう。

私は軽く愛想笑いを浮かべただけだった。


どうも、こういうタイプって苦手。

早く自分の持ち場に帰る方が得策だ。


事務の子から押印済みの書類を受け取り、広報部を出ようとした私に、彼女はぐいっと顔を近づけてきた。

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