疑惑のグロス

「へえ。でも、入社当時から松原くんは人気があるからなあ。今更もう、驚かないかも」




話が切れたのを理由に、私は再び、広報部を出ようと試みた。

けれど彼女に腕をがっしりと捕まれ、逃亡は失敗に終わった。


「違うんですって!凄いのは今からです!

その追っかけって、どうも半分ストーカーっぽい行動してるみたいなんですよ。

この頃、何度か二階の給湯室の陰で、こっそりと松原さんを見つめている姿を見たって人がいるんです。

でも、その子が何課の誰なのかは、まだわかっていなくて、謎のストーカーなんですけどね」


――全く、何なんだ、この会社。

噂はすぐに広がるわ、その噂は当たっている確率が高いわ。


そのストーカーって、私じゃないの……。

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