疑惑のグロス
――もしかしたら、一昨日のあの話でショックを受けたのかもしれないな。
だって、彼が大塚とデートに出かけるって、ゆたには教えてなかったんだもの。
きっと、彼と大塚が過ごした甘い時間を想像して、へこんでるのかもしれない。
失恋、か。
ゆたも私と同じ痛みを背負ってるのかしら。
「……ちょっとそれとなく話を聞いてみるよ。
ゆたがご飯食べないと、おばちゃんも元気が出ないんでしょう?」
昔、ゆたの家で飼っていたダルメシアンが亡くなったことがあった。
その時もかなりゆたが落ち込んだ。
徐々に回復してきた頃、いつもの食事ペースに戻ったからもう大丈夫だと、おばちゃんが嬉しそうに話してくれたのを思い出した。
やせの大食いであるゆたは、見ていて気持ちがいいほどご飯を食べる。
ごはんのおかわりが無くなるのは、ゆたが何か心に靄(もや)が出来はじめている前兆だ。
おばちゃんはきっと、気が気じゃないのだろう。
「そうなのよ。
おかげでこんなにもげっそりと激やせ中よ。
由鷹のことは、あたしらよりも苑美ちゃんが一番良く知ってるからね、頼むわ」
店じまいの支度をしながら、激やせしたというその丸顔をほころばせた。