疑惑のグロス

「ううん、きっとオレがやったあのお花見でのイベントのせいだ。

たぶんあれで落ち込んでるか、北野さんにいろいろと言われてるかのどっちかだと思う」


ゆたは、大きくため息をついた。


「昔からオレはうまく行かないタイプなんだ。

いたずら仕掛けるのも、母ちゃんに100点のテストを見せるのも、なんかタイミング合わなくてさ。

今回も、結果的には盛り上がったけど、もっと別な内容にしてたら、璃音さんから笑顔を奪わずに済んだんだ」


しおらしいゆた。

なんだか、らしくない。


「璃音さん、やけになったのか、今日は松原さんとの噂まで出ていたし。

もしも……それが本当ならオレ、北野さんにも顔向けできないよ」

「ねえ、ゆたは別に何も悪くないじゃない。

そんな噂立てられたくらいでダメになるなら、あの二人はその程度の仲だったんだよ」


――二人の仲を壊そうと、噂を流した張本人が言うべき言葉じゃないけどさ。

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