疑惑のグロス
「オレも朝、エントランスでこけたよ。慣れないスーツが窮屈でさ」
見上げて視界に飛び込んできた顔はもう、王子様にしか見えないほど光り輝いていた。
まるでおばさまにとっての韓流スターのようであり、若い子にとってのジャニーズの男の子だ。
私の隣の椅子に座っていたその人は、黒髪の似合うすらっとした男性だった。
胸につけた、受け取ったばかりの新品の名札
からその人の名前を知る。
松原瞬……だって。
ああ、かっこいい人って名前までもさわやかなのね。