疑惑のグロス

「ねえ……まだわかんないの?オレの好きな人」

「わかんないよ。どうして、花見のイベントで失恋なわけ?」


私に推測できないと解っててやってるなら、本当にむかつく。


私は、もどかしいのが一番嫌いなんだ。


「少し、思い出して。

イベントがあって、噂になったのは?」

「……魅惑のくちびる」

「そう。璃音さんがキスしたい人No.1に選ばれたのが、思いも寄らぬ噂になっちゃったんだ。

で、その噂が耳に入ったうちの一人が、苑美ちゃん」


――思い出しただけでも忌々しい。

あの定食屋でのひとときを思い出し、キリキリと奥歯を噛みしめた。


「そうよ。それで、たまたま帰りに会ったゆたにお好み焼き食べながら話をしたよね」

「うん。そこで、オレが聞いたのは……苑美ちゃんの、衝撃の事実」


そう。松原くんを好きだって、ゆたに打ち明けたんだった。

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