疑惑のグロス

あ……。




ゆたの好きな人……って……。




「ねえ、ホントにわかんない?」




「う……うるさいわねっ、まだ考え中よ!」




そんなにすぐ、気持ちを整頓できるわけがない。

なんと答えたらいいかも解らず、必死に返答をごまかした。


「苑美ちゃんってホント、パズルが苦手だよね。

小さい頃もさ、こんなにピースが埋まってるのに、まだわかんないのって何度も思ったよ」

「ち……違うわよ、ゆたにいいとこ見せてあげようって……最後の完成はやらせてあげてただけよ……」


じわじわと顔が赤く染まっていくのがわかる。


「じゃ、最後のピースはオレが入れろってことなの?」

「そ……そうよ……私、パズル苦手だもん……」

「いじわるなのも昔っからだよね。

もう慣れっこだしいいけどさ」


瞳をこちらに向けたゆたは、諦めの表情で静かに息を吸い込んだ。

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