疑惑のグロス
ゆたは苦笑いを浮かべながら、キャンディの瓶を手にした。
「小学校の時かなあ。
ちょうどこんなキャンディをおやつに食べてた時に、苑美ちゃんが目を輝かせて喜んだんだ。
『これ、すごく綺麗ね、宝石みたい!
大きくなったら、こんな宝石をプレゼントしてね。
結婚する女の人には、男の人が宝石をあげる決まりなんだから』
……オレ、すごく嬉しかったんだ。
ずっと苑美ちゃんのこと好きだったからさ、結婚してくれるんだーって単純に喜んだのを覚えてるよ」
幼い頃の契りなんて、誰もが一つくらい持ってるだろう。
はっきり言って、私はそれを覚えてはいなかった。
でも――ゆたは、とても嬉しそうだ。
ニコニコして、瓶からキャンディを一つ取り出した。
「はい。
苑美ちゃんはグリーンがお気に入りだったよね」
エメラルドに似た小粒のキャンディは、私の手のひらで小さく輝いた。