疑惑のグロス
憧れるのは、いつも素敵な男性ばかりだった。
スーパーマン的存在で、手が届くわけがないと知りつつも、目標を高く掲げることで自分の欲望を満たしていたのかもしれない。
気の弱い王様が、ギラギラの衣装で着飾って安心するかのように。
「松原くんは……王子様だから、憧れて終わる存在でしかないよ。
どう頑張っても彼女になれないことくらい、ゆただって解るでしょう?」
頭の上に乗ったメガネは見えるはずがないのだ。
存在が近くに有りすぎるゆたの良さがわからないのも、当然仕方のないことだった。
自分がショックを受けながらも、必死で私の恋を応援しようとしてくれたゆた。
それは意気地無しなのではなく、ゆたの優しさだと知るには、少し遅すぎたのかもしれない。