疑惑のグロス
代表の男の子が、希望に満ちあふれた大きな声で、決意表明をしている。
でも私の耳にはうまく入ってこないほど、ずっと彼のことばかり気になっていた。
開いた窓から柔らかな風が吹くと、そのたびに隣からほんのりといい香りがする。
いい男は、いいにおいがするって本当だわ。
神様には痛みと恥ずかしさをお見舞いされたけれど、それと引き替えに私は彼との出会いを貰った。
ありがとう、神様。
ダイキくんに再開できなかったことも、もう全部水に流すわ。
でも、お礼を言って損をしたと思ったのは、その一週間後のことだった。
だって……彼と、見事に配属先が別れてしまったんだもの。