疑惑のグロス

あくまで『思ってた』よ。過去の話ね。


中学上がるくらいから、あまりつきあいもなくなっちゃって、時々顔を見れば喋る程度だった。

でも去年突然、ウチの会社に入社が内定したと言って、ゆたんチのおばちゃんがお花を持って我が家にやってきた。


そりゃあもう、驚いたのなんの。

私の中では、ゆたはいつまでも鼻タレの弟だもの。


社会人として同じ空間に存在するんだってことが、何度考えてもどうしても飲み込めなかった。

スーツ着て、うちの会社で仕事する姿なんて想像もつかなくて。

なんだか急に大人になったような気がした。

そのうちすぐに、社会人として3年先輩である私の事も追い抜いてしまうかと思うと、悲しいような悔しいような、妙な気持ちでいっぱいだった。


もしまかり間違って、同じ課に配属されたらどうしようかと思って焦っていたけど、ゆたは販売流通課に配属が決まった。


販売流通課……そう、愛しの彼のいる課。

神様のいじわるは止まらない。

そこで彼と一緒に仕事ができるゆたのことを、一段と憎たらしく思ったのは言うまでもない。

< 18 / 130 >

この作品をシェア

pagetop