疑惑のグロス
4:犯人はお前か!
浮かれ顔のゆたと共に、家の近所のお好み焼き屋へと入った。
油臭い店内にもうもうと立ちこめる煙。
壁には長年に渡ってしみこませたお好み焼きの副産物のベタベタした茶黒い汚れが、ところどころに目立つ。
物心ついた頃から存在しているこの店。私よりも年上なのは間違いない。
大しておいしくもないけどまずくもない、子供の時分からのなじみの店だ。
ゆたとも、もう何度来たかわからないほど。
ゆたの隣の席でビールを注文する私が、いつもの店の景色となじまず、なんだかしっくりこない。
大人になってからゆたと一緒にココに入るのは、もしかしたら初めてかもしれないことに気付く。
私はビールのジョッキを、ゆたはコーラの入ったグラスを手にした。
「かんぱーい!」
「何に乾杯なのよ?」
「えっ? とりあえず、グラス合わせる時は乾杯って言うじゃん?」
「別に言わなくたっていいでしょ」
いつもつい乱暴に話してしまう相手ではあるけれど、今日は更にとげがあるような気が自分でもしている。
これから話そうと思う内容を頭で整理し始めていたからだ。
昼間のあの話を思い出すだけで、悔しい気持ちと胸のうずうずがこみ上げてくるんだもの。