疑惑のグロス
「相変わらずね」
ゆたはここではほぼ確実に、いか玉を注文する。
私は豚玉かミックス玉。
「オレ、もしかしたらこれ以外の物食べたことないかも」
「ゆたは殻を破るタイプじゃないもんね」
「そう?やる時はやる男よ、オレ」
……思わず、吹き出しそうになる。
誰がよ?
「ひでえなあ。だいたいさ、苑美ちゃんは小さい頃のオレのイメージを引きずり過ぎなんだよ」
「しょうがないじゃん。ゆたはいつまでも鼻タレ小僧だもん」
切り分けた豚玉にたっぷりとソースを絡め、温度を気にしながら口へ運ぶと、青のりの香りと共に香ばしい焦げた味が広がった。
小さい頃からの変わらぬ味にほっと一安心した時、思わず今日の目的を忘れそうになっていることに気付く。
……思い出したところで、そろそろ本題に入るとするか。