疑惑のグロス

突然泣き出した私の背中を、ゆたは困った顔をしながらも静かにさすっていた。

鉄板で焼いてるおじさんは、私たちの方を気にしないようにしてくれているのがわかる。

だんだん冷静さを取り戻し、私の嗚咽は静かになってくる。


「1位になった子ってさ。……かわいいの?」


せめて、かわいくない子だったら救われる。

彼は、女性のことを顔で選ばない人だって思うことができるから。


「うん。かわいい人だよ。オレにずっと仕事を教えてくれた人だけど、優しかったしね」


ゆたは素直な子だ。

なんで私が泣いているのかなんて考えもしなくて、聞かれたことに正確に答えを返す。


最後の望みはいともたやすく、ぶっつりと音を立てて絶たれてしまった。

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