疑惑のグロス

「男の人は彼女にみんな投票したって本当?」

「うん。全員って言っても過言じゃないかもなあ」

「じゃあ……ゆたも?」

「……う、うん……だって、他に思いつかなかったし……。

でも、璃音さんと本当にキスしたいって思ったわけじゃないよ!」

「あんたが誰とキスしようが別にいいけど」


言おうか言うまいか。

一瞬ためらった後、やっぱり我慢しきれずに胸の内をゆたに漏らした。


「……松原くんも彼女に一票投じたってのが、ショックでさあ……」


騒がしい店内では、私の泣いた後の顔も目立たずにいられるのが助かる。

割り箸を皿の上に置いて、重い気分で頬杖をついた。

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