疑惑のグロス
5:反逆
「苑美ちゃん……松原さんが好きなの?」
ゆたは困ったような顔をして尋ねた。
「頭から離れないのよ。
もう、4年も前の出来事なのにさ」
思い出すだけできゅうんと胸が痛む。
少しだけセンチメンタルな気分にひたりながら、彼と出会った時のエピソードを初めてゆたに全部話した。
「知らなかったよ……苑美ちゃんが松原さんをそんな風に思ってたなんて」
自分のしたことに反省しているのか、ゆたは悲しげな影を落とし、申し訳なさそうにつぶやく。
「だって、あんたにだけは言いたくなかったんだもん」
「えっ!なんだよソレ……オレって信用ないんだな」
「信用とかじゃなくって、うまく言えないけどもっと別なもの。
ゆたにはまだわかんないよ」