疑惑のグロス
小さい頃、ゆたは興味を持ったことを、とことん質問して来る子だった。
私も最初はお姉さん気取りであれこれ教えていたけど、途中からあまりのしつこさに面倒になってしまい、何かと重宝する『ゆたにはまだわかんないよ』というフレーズを多用するようになった。
「バカにすんな。もう子供じゃないんだからオレにもわかるよ」
……少しムッとしたらしい。
炭酸の抜けたコーラを全部飲み干し、不機嫌そうな顔を作った。
「わかるって……何が?
私のこの気持ち、あんたになんか解るわけがないでしょう?
本当に、久々の恋だったのに……」
いらいらが再燃した私は、ゆたに容赦なく思いの丈をぶつけた。
「松原さんが、璃音さんを好きだなんて決まったわけじゃないじゃんか。
部署の単なるお遊びに参加しただけのことだよ」
「んなこと、あんたに言われなくてもわかってるわよ!
でも私は、彼ならそんなのに参加しないような男だと思ってたの!
女を顔で選ぶような薄い男じゃないって……」