疑惑のグロス
コ……コイツ――――!
しばらく一緒に行動しない間に、随分と生意気になったものね。
時間が流れている以上、昔のゆたと変わっているのは当たり前だ。
けれど、言い返すなんてできなかった頃を知っているから、今のこの態度は私のしゃくに障るだけでしかない。
そんな思いに気付いていないであろうゆたは、相変わらず強気な態度で続けた。
「とにかく。オレ、それは断る……ごめん」
ポケットから出した千円札を四角くたたんでテーブルの上に置くと、バックを掴んで無言で出て行った。
成長したゆたの姿に時間の流れを感じ、取り残された自分が哀れに感じる。
ふん……だ。
私のこと、待ってーっていつも泣きながら追いかけてたくせにさ……。
清涼飲料水のロゴ入りの古びたグラスの下に小さくできた水たまりが、乾いた紙幣に吸い寄せられてゆくのを、ぼんやりと見つめていた。