疑惑のグロス
8:誰にも言えない秘密
この後に及んでまで、あの女をかばうなんて……もしかして、ゆたは結構本気なの?
私は、自分だけが熱くなっているような気にさせられ、急に恥ずかしくなり口を閉じた。
「ねえ、苑美ちゃん……本当に松原さんのことが好きなの?」
ゆたは、ベッドの横にちょこんと座っているくまのぬいぐるみの蝶ネクタイを直しながら尋ねた。
そのぬいぐるみは、いつだったかゆたが私にくれたものだ。
この子はゆたがくれたものだって思いだしたのは、久しぶりだった。
「うん……。珍しく、人を好きになった。
でも、何もできないまま、もう四年だよ。
せっかく……頑張ろうって……思ってたのに……ひどいよ……」
あれ、私、涙出てる――。
こんなに悲しい出来事だとわかってたくせに。
ごまかす為に築いていた私の壁は、もろくも崩れ落ちた。