疑惑のグロス
「さすが苑美ちゃん、社内の事情には詳しいね。
っていうか……お願いだからこのことは、絶対誰にも言わないでよ!」
フン。両手を合わせて拝む姿が大げさなのよ。
……でも、そんなに強くお願いされなくたって大丈夫なところが悲しい。
「――わかってるわよ。
心配しなくても、社内に噂話を話すような相手なんていないってば」
私の口から出た約束の言葉に少し安心したのか、ゆたは再び話を続けた。
「オレに仕事を教えてくれたのは璃音さんなんだ。
でも、璃音さんに仕事を教えてくれたのは北野さんで……。
璃音さんって、何かと北野さんに相談するなあとは思っていたけど。
ある日、仕事の帰り道で二人が並んで歩いてるのを見かけてさ。
それ以来、なんとなく目で追ってたら、璃音さんは北野さんのことを、上司以上の目で見ている時があることに気付いたんだ。
階段でたまたま二人と出くわしたことがあったんだけど、その時もオレの顔見るまで仲良くタメ口で話してた。
北野さんのこと、『雅城(まさき)』って名前で呼んでるのを聞いた時に、この二人はつき合ってるんだって確信したよ」