疑惑のグロス

外は、気持ちよく晴れ渡っている。

仕事をしている私のことをまるでバカにしているかのようだ。


……朝の天気予報では、明日の午後から崩れるって言ってたもの。

晴天を見せつけるのも今のうちだけよ。


負け惜しみを心でつぶやくと、手の中のシャープペンシルをくるくると回した。


回しては落とし、拾ってはまた回す作業を何度繰り返しただろう。

大きくため息をついたらまた、手からポトリと落ちた。


――私の仕事がさっきからはかどらないのはお天気のせいもあるけど、何より大きな原因なのは、二階の給湯室のせいだ。


ああ、気になる。

昨日の今頃の時間、あそこで二人は顔を見合わせて笑っていた。

もしかしたら今日もこっそり会っているかもしれないわよね……。


いてもたってもいられないとは、まさにこのことだ。

我慢できなくなった私は、シャープペンシルをデスクの上に置き、ぐるりと課内を見渡した。

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