疑惑のグロス

幸い、今日は門田さんが有給を取っている。

他の上司は、会議で席を外しているし……よし、行くなら今だ。




「ごめん……朝からちょっとお腹の調子悪くてさ。

少し、トイレに座ってきてもいい?」


なるべく辛そうに見える顔を作り、隣の席の田上さんに小声で耳打ちをした。


彼女は唯一、この課に配属された私の同期だ。

この子とは社内で一番普通に会話ができる。

とは言っても、世間話くらいは時々するという程度だけど。


さばさばした性格は、嫌いじゃない。

最近、ロングだった髪の毛をばっさりとショートボブにしてから、ますます女に磨きがかかった印象だ。

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