疑惑のグロス
廊下に、昨日と同じタバコ臭がした時点で確信した。
やっぱり、今日も二人で会っているんだ……。
はやる気持ちをなんとか押し込め、私は昨日と同じようにドアの影に隠れた。
ほこり一つ飛ばさぬよう細心の注意を払いながら中を覗き見ると、お互いを見つめ合う松原くんと大塚の姿があった。
今日は少し声が小さくて、よく聞き取れない。
でも、楽しそうに笑っているのは間違いないわ……。
もうっ!私の耳があと2センチ大きかったら!
いらいらする気持ちを抑え、心を静めて耳を澄ましたその時。
「明後日の土曜日。オレとデートしてくれない?」
ああ、デートの約束か。
って……!デート!?
いやよ、そんなの聞きに来たんじゃないのに――!
……でも、待って。
夕べのゆたの話では、大塚は北野くんとつき合っているって言ってたじゃない。
この話、もし断られれば、彼だってなんとなく次を誘いづらくて、次第に彼女のことを諦めるかもしれないわ。