疑惑のグロス
「え――――――!なになになに、その話!」
突如、どこから現れたのか、他の課の女の子が私たちのところへものすごい勢いでダッシュしてきた。
急になんなの、この子。
……っていうか……誰?
ちょっと小太りなその女の子の顔に覚えがない。
どこの課の人だろう……。
あっけにとられてる私に変わって、田上さんが苦笑しながら言った。
「なんでもないわよ。例の『魅惑のくちびる』の持ち主の子について話してただけ」
止めていた手を再びせわしく動かす田上さんに、後ろから覆い被さるようにその女の子が抱きついた。
「もう、ちゃんと聞いてたんですからあ。
いじわるしなくてもいいじゃないですか、教えて下さいってば!」
むぎゅう、という擬音が聞こえそうな、大きな胸を押しつけていることに彼女は気付いていないみたいだ。
田上さんは、明らかに困った顔をしながら、重たそうに口を開いた。