疑惑のグロス

「大塚さんがね、松原と仲がいいらしいよって。そんな話」

「きゃあ!やっぱり?

私も実はそんなこと思ってたんですよねえ!

早速帰ったらみんなに知らせなくちゃ!」


自分で質問を投げかけ、自己解決をする典型的なタイプだ。

話し終えたその子は、コピー機から紙の束を抱えると、一礼して部屋を後にした。


「あーあ。これでまた、すぐに社内に広まっちゃうなー」


マグカップを持ち上げてコーヒーを一口すすり、田上さんはため息をついた。


「あの子、すごく噂好きな子でさ。

友達少ないみたいだし、噂の中心にいることで寂しさを紛らわしてるんじゃないかな。

ちなみに、広報の女の子よ。コピー機の調子が悪いって借りに来てたの」


「……へえ。そうなんだ」


私も一応困った顔を作って見せた。

でも内心は、アドリブが入ったことで、シナリオが想像以上にうまく運んだことに大喜びだ。


……これで、北野くんの耳にもその噂が入るのは時間の問題ね。

< 75 / 130 >

この作品をシェア

pagetop