疑惑のグロス
「大塚さんがね、松原と仲がいいらしいよって。そんな話」
「きゃあ!やっぱり?
私も実はそんなこと思ってたんですよねえ!
早速帰ったらみんなに知らせなくちゃ!」
自分で質問を投げかけ、自己解決をする典型的なタイプだ。
話し終えたその子は、コピー機から紙の束を抱えると、一礼して部屋を後にした。
「あーあ。これでまた、すぐに社内に広まっちゃうなー」
マグカップを持ち上げてコーヒーを一口すすり、田上さんはため息をついた。
「あの子、すごく噂好きな子でさ。
友達少ないみたいだし、噂の中心にいることで寂しさを紛らわしてるんじゃないかな。
ちなみに、広報の女の子よ。コピー機の調子が悪いって借りに来てたの」
「……へえ。そうなんだ」
私も一応困った顔を作って見せた。
でも内心は、アドリブが入ったことで、シナリオが想像以上にうまく運んだことに大喜びだ。
……これで、北野くんの耳にもその噂が入るのは時間の問題ね。