疑惑のグロス
11:理想と現実
明日は土曜だと言うのに、何の予定もない。
スナック菓子を頬張りながら、テレビを見て夜更かしするくらいしか、本当にすることがないんだ。
寂しいやつだと言われても結構。
悔しいけどホントのことだもの。
社内の女の子たちみたいにジムに出かける意欲もなければ、おいしいデパ地下スイーツにも興味無し。
当然デートするような人もいないし、異性とのお出かけは、せいぜいお父さんとラーメン食べに行く程度だ。
ガラス窓に打ち付ける雨粒を見つめながら、昨日の松原くんの台詞を頭の中で繰り返していた。
『明後日の土曜日。オレとデートしてくれない?』
私に言ってくれた言葉だったら、どんなに嬉しいだろう……。
大塚に向けて言った言葉だとわかっているのに、脳内でリフレインするだけで鳥肌が立つのが少し悲しい。