疑惑のグロス
ぬいぐるみと目を合わせているうちに、私はあることを思い出した。
これ、ゆたからもらったぬいぐるみ……。
キスの相手がなんだかゆたに思えてしまい、一気に興奮が冷めた。
部屋の照明を一段階落とした。
何かに集中していなければ、明日の二人のデートのことばかり考えてしまう。
お気に入りのこの外国映画のDVD、もう何回見ただろう。
でも、落ち込んだ時は元気にしてくれるハッピーエンドなコメディ。
ピンクのパッケージを見つめ、ヒロインの女の子に手を合わせる。
今日もひとつ、よろしく頼むわね。
甘いチョコレートを頬張って、リモコンを片手にビーズクッションに顔を埋めた。
いつも、エンドロール直前までは起きているのに、不思議と最後まで見ている記憶がない。
いつのまにか寝ちゃって、朝が来るというパターンにももう慣れてしまった。
……もちろん、今朝もそんな目覚めだった。
手にはしっかりリモコンを持ったまま、ウイークデー用にセットしてある携帯アラームもきちんと止めているから、我ながら本当に感心する。